両親がいつも仕事で家にいなくて寂しい思いをしている男の子が、雪のつもった誕生日に不思議な出逢いをします。ちょっぴり寒い雪の中でもあったかくなれるお話。
明日はボクの誕生日。
久しぶりにパパとママに会えるから楽しみにしていた今日の夜…。
「え、帰ってこれないの?」
ママと電話しているボクをおばあちゃんが心配そうな顔で見てたから、ボクはちょっと無理やり笑ってこたえた。
「うん、わかった!雪降ってて危ないしまた今度帰って来てね!」
みんなを困らせたくないから我慢しなくちゃね…寂しいけど大丈夫。
……大丈夫ってもっと我慢して、いい子でいれば良かったな。
「ここ、どこ…?」
パパもママもいないのに早く帰ってもなぁ。 学校帰りにそう思って、つい寄り道しちゃったんだ。
友達とよく遊びに来るこの森に…だけど昨日降った雪がつもってて、いつもと違う森に見えて迷子になった。
「…怖い……寒い………ママぁ…」
「ねえキミ!大丈夫?」
え??
「迷子?ぼくがお家まで連れてってあげるよ!」
いつのまにかボクの前にいたのは、子どものクマだった……それも雪みたいに白いクマさん。
「…あ、あのさ」
「なーに?」
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「キミは、誰なの?」
「ぼくは通りすがりのただのクマ!」
「クマさん…冬眠しなくて平気なの?」
「へーきへーき!白いから!」
白いクマさんってホッキョクにいるから寒いの得意なのかな……でもなんで喋れるんだろ?
「こっちだよ~!」
「あ!待って………くしゅん!」
「寒い?じゃあぼくに抱きつきなよ!」
クマさんは雪みたいに白いのに…とってもあったかい。
「これなら寒くないでしょ?」
「う、うん……歩きにくくない?」
「ぜーんぜん!」
そのまま歩いていたら空からまた雪が降ってきたけど、ボク達はくっついてぽかぽかしてるからへっちゃらだった。
「ちゃんと帰ってこれたぁ!ありがとう!」
「いえいえ……きみが笑ってくれて、ぼくは嬉しいよ」
「?…どうして僕が笑うと嬉しいの?」
「だってぼくらは、友達だろ?」
「……友達…」
「エヘヘ!もしくは相棒でも家族でもいいよ!」
ママ達に会えなくて残念だったけど、相棒みたいな家族みたいな不思議な友達ができて…とっても素敵な誕生日。
「それじゃあ……またね!」
「うん!またねクマさん…」
クマさんはピョコピョコと走りながら森へ戻っていった。
……本当にまた会えるのかなって、寂しい気持ちになっていたら家のドアが開いて…おばあちゃんがボクを抱きしめた。
心配かけてごめんなさい…。
ボクが謝るとおじいちゃんが頭を撫でて……パパとママから届いた誕生日プレゼントを渡してくれた。
「………………!」
プレゼントの中身はシロクマのぬいぐるみ…ついさっき一緒にいたクマさんそっくり。
「えへへ…また会えたね!」
ぎゅっと抱っこしたら、ぽかぽかとあったかい気持ちになって…ずっと近くにあった寂しさとバイバイできたんだ……ありがとうクマさん。