「あなたの使命は【時空のかけら】を護り抜くことです」
そんなの今となっては簡単だと思ってた。
かけらを狙う魔族の大将はすでに討伐したし…俺はただ平和なところを点々としてりゃあいいだろうって。
「使命と共に継承した欠片の勇者の力…使い方を間違えないでくださいね」
時空の管理者だって、遠回しに『危険な事に首を突っ込むな。力は己とかけらを護る為だけに使え』と言っている。
「あなたの判断一つで、時空のかけらを奪われるという事なのですからね……【欠片の勇者グランド】」
時空のかけらはドマイナーな伝説。もう狙われやしないさ…そんな考えでいたんだ。
「なあアンタ!【時空のかけら】を持ってるんだろ?オイラにそれ、くれよ!」
宝を欲しがる盗賊にも、民間伝承に詳しい学者にも見えない変なやつに逢うまでは…
「ちょ、おい!無視は禁止!!オイラどうしても時空のかけらが必要なんだ!」
「俺はそんなもの持ってねえ。他を当たれ」
「そこ!嘘つかない!この堕天使アージェント様の目は誤魔化せないんだからな!」
「堕天使?…罪を重ねて神界から落とされた天使のことか」
「そうそう!だから歴史を変えてしまうほどの力がある時空のかけらで堕天する前に戻っ」
「おいコラ!!でかい声で時空のかけらのことを口に出すな!」
「ほら、やっぱり持ってるんじゃないか」
「このガキっ……おいお前、性別はどっちだ」
「性別?」
「野太い声の女天使もいれば、女々しい声の男天使もいるとか…中性的な連中ばっかりで俺には判断がつかねぇ」
「あーなるほど。…つってもオイラはー」
「…話には聞いたことがあるが、両性体の天使ってやつか」
「うんどっちでもいいかな。アンタの好きなほうでいいよ~」
「なんだそりゃ……じゃあ男ってことにして-」
「え?この勇者まさかホ…」
「ちげーよ!!!女だったらしばきにくいから性別を聞いたんだ!!」
「男には容赦ないんだ?バイオレンス勇者だねえアンタ」
「時空のかけらを護る口封じのためだ」
「言っとくけど、アンタを探すために色々回ってきたから…オイラを始末しても口封じにならないよ」
「は?まさか、時空のかけらと欠片の勇者の伝説を…」
「広めまくったり情報聞きまくったりした!つまり今のアンタは、そこそこ有名人!」
「何勝手に人の知名度上げてんだよ!?」
こんな感じで…欠片の勇者である俺、グランドは時空のかけらを狙う者たちに日々追われることになったのだった……納得いかねぇぇ!!!